個性的な商業施設・ショップのリサーチメモ

F's SHOP Report!

ショップリサーチの備忘録・感想_φ(・_・

vol 6.MIRROR/カキモリ《東京都台東区蔵前/2017.08.23》

下町・蔵前散歩にて、前々から気になっていた施設を2軒。「蔵前」は浅草と浅草橋の中間、両国から隅田川を対岸に位置。町工場やおもちゃ問屋が建ち並ぶ非常に地味な土地柄。そんな蔵前に個性的なレストランやショップが続々と開業、古い下町と調和する注目のエリアになっているのだ。

 

まずは、さまざまな業態のレストランを続々とオープンさせ、どれも人気店へと成長させているバルニバービが運営、既存の廃ビル(誰も廃ビルとは言ってませんが勝手に想像しちゃいましたスイマセン)をリノベーションした食の複合商業施設「MIRROR」。7階建てのビルの中に、リバーサイドカフェ「シエロイリオ」、卓球が楽しめるバー、パーティールーム、ルーフトップバー、同社オフィスが営業をしている。
「MIRROR」が開業する前のこの場所は、土曜でも店前の通りを歩く人が50人もいなかったような寂れた場所だったらしい。そもそもバルニバービは、人通りが少ない、活気がなく寂れている立地に積極的に出店する「バッドロケーション戦略」で成長してきた企業だ。つまり会社のアイデンティティに、立地に合ったレストラン・施設を開業させ、新たな人の流れを生み出し、その街の持つポテンシャルを引き出そうとするデベロッパーのようなマインドを息づいているのだろう。そういう意味では蔵前・リバーサイドというこの場所に目をつけた先見性・チャレンジ精神は素晴らしいと思う。
リノベーション方法も元々のビルが持つ躯体が活かされている。普段から集客力を考えている者としては「店舗への導線が…」とか「道路から店舗の顔が見えない…」とか考えてしまうが、こうした今までの固定概念が崩されていったのが分かった。大きなドアを開け、雑居ビル風の暗い階段を上がった所に広がる開放感あるレストランの風景は感動すら覚えた。f:id:fskol869:20170826174439j:image

また、窓際の席からは隅田川を見下ろされ、きらめく水面や川の向こうにはスカイツリーが見え最高のロケーションだ。

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この窓際の席について面白い話がある。このビルが建てられた40年前の隅田川は今よりもかなり汚れていて、川側に窓を設置できる状況ではなく、川沿いにも関わらず窓がなかったらしい。高度経済成長の頃の日本がいかにムチャしてたかが分かるエピソードだと思いません?
こんな「MIRROR」を体験した後、周りの古いビルを見ながら「ここならこんな開発できるな。コッチはこんな導線で…」などと想像しながら蔵前散策を続けるのも、また楽しいのだ。

 

さて次は、「MIRROR」から歩いて10分程、オリジナルのノートやインクを作ることができる文房具店「カキモリ」。書く事が減ってきた現代人に「たのしく、書く人を増やしたい」という思いがコンセプトととのこと。この地を選んだ店主さんの以下の言葉は商業デべにとって大変参考になる一言だ。
「文房具は道具のひとつですから、使ってもらわないと意味がないと思っています。だからこそ手を出しやすい値段設定にしたくて、できるだけ固定費がかからない場所を探しました。
それに青山や表参道などおしゃれなお店が揃うところに出店しても、埋もれてしまうと思います。蔵前のような小売に向いていない場所であってもコンセプトが尖っていれば、お客さんは来てくれると考えました。文房具を売るだけでなく、お客様と職人さんをつなぐ役目を担いたいと思っています。(ブログ・灯台もと暮らしより)」とのこと。よってオンラインショップを持たず、作ったものをお客様に商品を直接届けることにこだわりを置いている。f:id:fskol869:20170826174037j:image
キモリのシステムはこうだ。

表紙裏表紙を厚紙や革などの中から選ぶ→中のノートを紙質、用途、カラーから選ぶ→リングを選択→留め具などアクセサリーを選択となり、トータルではおおよそ2000〜3000円位になる。の一冊となるとなかなかの金額だが、世界に一冊の自分だけのノートと思えば必ずしも手が届かない金額でもない。当日は平日にも拘らず中々の混雑っぷり。しかも平均年齢もソコソコ若い。飲み代ケチる若者達もオリジナルノートをオンラインを持たないショップにワザワザ脚を運んで3000円で創って購入する。今の消費構造がここに全て象徴されているような気がする。


こんなマンパワーや想い、環境資源があればもっと面白く、成長していくに違いないと思わせる。蔵前はそんな街だった。